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ミステリの祭典

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決闘は血を見てやめる

作家 カトリーヌ・アルレー
出版日1975年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2023/06/01 10:48登録)
(ネタバレなし)
 23歳のパリ娘で洋装店の美人店員パトリシア(パット)・ディメルジュは、アメリカ人の実業家で米国の外交特使を務める48歳の紳士クリス・メッシンジャーと知り合う。クリスは、パリ在住の間の秘書兼家政婦兼セックスフレンドとしてパトリシアと契約を結び、経済支援を初めとして優遇するが、他の男との浮気だけは認めなかった。そんなパトリシアはクリス不在中に暇を持てあまし、元学友で今は離婚女性のミッタから、評判のロシア人の女占い術師アラ・バリノフを紹介された。そんなバリノフが、パトリシアに告げた宣託は。

 1973年のフランス作品。アルレーの第13長編。
 
 愛人契約のようなものを結んだヒロインがやがて……の、マジメな艶談ドラマという感じでストーリーが展開。
 フツーにぐいぐい読ませるが、犯罪性もミステリ味もほとんどなく、どこでミステリに転調するのだろ、と思っていたら、後半は結構サスペンス度が高くなった。
 現実のすぐ隣で生じそうな人間模様で、その意味でのリアルでなかなかコワイ。(詳しくはナイショだが。)

 しかし最後まで読んで、けっこう驚かされた。いや、サプライズはあるだろう、とは予期していたが、また別の方向に行くだろうと考えていたので。
 バカミス一歩手前の良い感じに熟した(腐った)どんでん返しで、こーゆーいかにもミステリらしい? プリミティヴな驚きが心地よい(早めに、先の驚きが分かる人は、何かしら、分かるかもしれんけどね)。
 個人的にはアルレーの中では上の下か中の上。
 2時間でサクサク読める、佳作~秀作であった。
 
 なお本作は76年に映画化され、入手した75年初版の創元文庫の初版にも映画ジャケットがついてるけど、事情があって日本での公開はオクラ入りになったらしい。とりあえず、そこまで知っておいてください。
 お蔵入りの事情に関しては、本作(原作)のネタバレになるかもしれんので、原作を未読の人は、あまり詳しく調べないように。

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