home

ミステリの祭典

login
赤い矢の女

作家 山田正紀
出版日1988年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 虫暮部
(2023/05/26 13:10登録)
 山田正紀作品にトラウマを背負った主人公が登場する度 “またか” と苦笑したものだが、それは必然的なキャラクター設定なんだな~と反語的に良く判った。
 これと言った傷跡の無い本作のヒロインが、一体どのような動機付けで事件の渦中に踏み込んで行くのか、さっぱりピンと来ない。そこまで彼氏のことを深く愛していた感じではないし、ソ連に対する因縁があるわけでもない。単なる意地と勢いに流されて何度も殺されかけているのであって、しかしそんな意地を張るような性格にも見えない。こういう不自然さがここまで不気味だとは。

 彼女以外の登場人物はそこそこ生きているし、80年代のソ連紀行文としての面白さは感じた。

1レコード表示中です 書評