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ミステリの祭典

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南海ちゃんの新しいお仕事 階段落ち人生

作家 新井素子
出版日2022年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 虫暮部
(2023/05/19 13:09登録)
 新井素子が新口語体を引っ提げて登場した時、読者は驚きつつ、その効用は認めつつ、こう思ったのではないか――“若気の至り”。
 実際に、一時期見受けられた亜流は姿を消し、もしくはより広義のライトな文体へ収斂した。あれはあくまで “現象” だったのだ。
 本家以外は。
 デビューから45年を経て、新井素子は変わらず新井素子なのである。しかも本作は二十二歳女子の一人称なので、嫌と言う程あの語り口に浸れる。微妙にくどくてわざとらしくて、しかしこの緩めの設定のSF世界には不可欠。ふわふわと頑固職人道を貫く様に勇気を貰った。

 文体と裏腹に物語作家としてはしっかりした基盤を備えた人であり、ミステリ読みとしては当然、貫井徳郎を連想して、途中で浮かんだ疑問点が最終パートでちゃんと取り上げられていたので深く頷いた。作者も言うように謎は謎のままであるが、この延長で南海ちゃんに謎が解けるかと言うとそういうものではない気がする。

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