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ミステリの祭典

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灰色の評決

作家 犬塚理人
出版日2021年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2023/05/21 20:08登録)
 ごく普通の一般人である二宮智樹はある殺人事件の裁判員として裁判に参加することになる。その裁判では、美容師の男が若い姉妹を殺害した事件が裁かれることになっていた。智樹ら裁判員の多くが美容師の有罪へと意見が傾くなか、八木麻衣子と名乗る若い女性だけは美容師の無実の可能性を訴える。だが評決になって、麻衣子は一転して有罪へと意見を変え、美容師には死刑判決が下る。裁判から数か月後、智樹は麻衣子とつきあうようになり結婚を申しこむが、なぜか麻衣子はそれを拒む。折しも美容師の事件の控訴審が開かれ、麻衣子は再び美容師の冤罪の可能性に言及していた。その矢先、麻衣子は忽然と姿を消す。彼女はなぜ姿をくらましたのかー。(「BOOK」データベースより)

 こういう、「主要人物の行方が分からないまま(しかも、位置づけ的には生きていそう)}というパターンって、その真相が気になって読む手が止まらなくなるよね(笑)
 裁判員裁判の、民間裁判員の葛藤(ある意味闇)を題材としてうまく掬い上げ、リーダビリティの高い作品にまとめ上げられていると感じる。展開から言って美容師は冤罪で、真犯人が明らかにされる筋であろうことは予想がつくし、そうあってほしいと思って読んでいるからそれなりに満足できる着地点。ミステリの仕掛けとしての精緻さはそれほどではないかもしれないが、物語として楽しめたのでこの評価。

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