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ミステリの祭典

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虚構推理 スリーピング・マーダー
岩永琴子シリーズ

作家 城平京
出版日2019年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2024/02/23 22:44登録)
「二十三年前、私は妖狐と取引し、妻を殺してもらったのだよ」
妖怪と人間の調停役として怪異事件を解決してきた岩永琴子は、大富豪の老人に告白される。彼の依頼は親族に自身が殺人犯であると認めさせること。だが妖狐の力を借りた老人にはアリバイが!
琴子はいかにして、妖怪の存在を伏せたまま、富豪一族に嘘の真実を推理させるのか!?
虚実が反転する衝撃ミステリ最新長編!
Amazon内容紹介より。

主役が人ならざるモノだとこうなってしまうのでしょうかねえ。シリーズ第一弾もそうだった様に、ここでも色々と「真実」をでっちあげています。最初の高校時代の琴子を描いた、同じ部屋で三人連続で自殺した事件はまあ説得力がありました。なかなか面白い推測でなるほどなと感心させられるものでしたよ。しかし本筋の妖狐による妻殺しに突入してから、急に読み難くなった印象で、私にとっては好ましからざる展開になりました。ダミーの推理はそれなりに真実味がある一方、納得の行かない部分もあり多重推理ものと言う程中身が詰まっているとは言い難いですね。

肝心の真相となると完全に後出しで、伏線回収とかロジックの構築とかとは無縁の世界でかなり拍子抜けです。本格ミステリとしての矜持はどうした、と言いたくなる様な締め方で物足りません。という訳で冒頭で申し上げたように、二人の主人公がアレだとどうしても特殊性に頼らざるを得ない事になってしまう訳ですね。この作者の場合、一般的に見てトリックメーカー的な立場には無い為やむを得ないかも知れませんけれど。
しかし、メインテーマよりも高校生琴子がミステリ研に入部した経緯やその後のちょっとした活躍の方に惹かれたので、その点を鑑みて無難な評価に落ち着きました。

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