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ミステリの祭典

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ゴースト・レディ
アル・ウィーラー警部

作家 カーター・ブラウン
出版日1963年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/05/01 19:47登録)
(ネタバレなし)
 雷鳴が響く嵐の夜のパイン・シティ。「おれ」ことアル・ウィーラー警部は、お持ち帰りした黒髪の美人ジャッキーとお楽しみ寸前だったが、上司のレズニック保安官から突然の電話があり、殺人事件の捜査を命じられる。渋々、嵐のなか、愛車をとばしてウィーラーが出向いた先は、シティから離れた山周辺のオールド・キャニヨン・ロード。そこに住む大地主エリス・ハーヴェイ(60歳の男性)の屋敷で、事件は起こったようだ。被害者は、当主のうら若い次女マーサに求婚していた20代半ばのハンサムな詩人ヘンリー・スローカム。実は屋敷には、100年前に若死にした女性ディーリアの幽霊「灰色のレディ」が跋扈するとの噂があり、スローカムはその幽霊と対峙して度胸を示し、自分をマーサの婚約者としてアピールするつもりで、ひとりで施錠された部屋に入った。だが施錠を壊して室内に入ったウィーラーが認めたのは、頑丈に内側からロックされていた空間で、喉をかき切られたスローカムの死体だった。そして、さらに怪異な証拠として、死亡直前のスローカムと灰色のレディ、ディーリアとの会話を録音したテープなども発見される。

 1962年のクレジット作品。aga-searchの書誌データで、ウィーラーものの第23長編。
 「カーター・ブラウンの密室殺人もの」として一部マニアには有名な作品(笑)で、あらすじを読んでもらえばわかるように、怪奇オカルトミステリの要素もある。
(なお原題は「The Lady is Transparent」。淑女は透明、というか、お女性はスケスケ、というか。)
 ちなみに何十年前に一回読んでるが、内容は120%忘れてるので、再読じゃ。

 ウィーラーが自宅で楽しいことをしようと思ったら、殺人事件を告げるレズニックの電話で邪魔される導入部は『エキゾティック』とおなじ。たぶんしっかり調査すれば、このパターンは他の作品にもまだまだあるだろう? 
 怪異な、というよりは訳ありな100年前の伝承にまで話が広がり、ちょっとクセのある事件関係者と応酬を繰り広げるウィーラーの描写はなかなかテンポは良いが、マジメに不可能犯罪もの密室パズラーの興味で読むと、真相は拍子抜け。いやまあ、大方の読者は、もともとそんなに期待値は高くないとは思うが(笑)。
 謎の提示と雰囲気だけは悪くないので、話のタネに読みましょう。
 評点は0.5点オマケ。

 ちなみに、ウィーラーの無軌道ぶりを叱るレズニックのセリフで、いざとなったら、市警の殺人課に戻してやる、というのがあり、ちょっと興味津々。
 つまりウィーラーはもともと、市警の殺人課に所属し、選抜されて? 保安官事務所付けの上級刑事に栄転したということになるんだね?

 詳しいことは未訳の長編第1作『Blonde Verdict(金髪の評決)』とかで書かれてるのか? 日本語で読みたいな。ムリだろーな(涙)。

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