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ミステリの祭典

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ロスト・アイデンティティ
ジェイ・カーシム

作家 クラム・ラーマン
出版日2022年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 YMY
(2023/04/25 22:19登録)
ジェイはドラッグの売人。酒も飲むけどモスクにも通う、自称敬虔なムスリムだ。麻薬密売容疑で逮捕された彼は、無罪放免の代わりに、MI5のエージェントとしてイスラム過激派組織に潜入するよう命じられる。
パキスタンにルーツを持つジェイは、西欧ではマイノリティーである自分たちの立場も意識せざるを得ない。英国の市民であると同時にパキスタン系のムスリムでもある。二つのアイデンティティーの間でゆらぎを抱えた彼の苦悩が印象に残る。とはいえ、全体のトーンは明るい。ジェイの造形はもちろん、彼の友人や家族、そしてMI5といった人々との関わりが、ユーモラスを交えて語られる。重いテーマを軽快に読ませる小説だ。ラストも強烈。本書だけでは消化しきれていない要素も残っており、続編の翻訳も楽しみだ。

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