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ミステリの祭典

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UMAハンター馬子〈1〉湖の秘密
蘇我家馬子シリーズ

作家 田中啓文
出版日2002年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2023/04/10 22:57登録)
日本でも珍しい「おんびき祭文」の語り部、蘇我家馬子。芸は一流だが、性格、素行に問題あり。弟子のイルカを筆頭に辺りかまわず大阪弁で毒を吐き、傍若無人なことこの上ない「最悪なおばはん」である。そんな馬子がえり好む地方巡業先には、何故かUMAの噂と不老不死の伝説がつきまとう。イルカにも明かされぬ馬子が探る秘密とは何なのか?そして、二人の行く手に必ず現れる謎の男・山野千太郎の目的は?本格伝奇ギャグミステリ、ここに誕生。
『BOOK』データベースより。

本シリーズ2篇の後6年の時を経て復活することになる蘇我家馬子。その際は何故か弟子のイルカとともにこなもん屋をしています。どの様な心境の変化があったのか分かりませんが、作風はまるで違います。しかし、大阪のおばはん馬子のキャラは相変わらずで、その個性の強さで本作の半分は成り立っている感じがします。『こなもんや馬子』では弟子のイルカはあまり目立ちませんでしたが、ここではイルカ目線で描かれていて、馬子の行き過ぎた待遇に耐えながらも師弟の絆を思わせる叙述と少々のギャグが冴えています。

さて本作で取り上げられるUMAはネッシーならぬリュッシー、誰もが知っていて幾多の目撃情報がありながら捕獲されなかったツチノコ、そして狐、と言ってもただのキツネではなく人を化かすと言われる天狐。
どれもいまいちテンポが悪く話が前に進まないのが難点ではありますが、馬子が時折見せるどうでも良い蘊蓄で各UMAを分かり易く解説しており、その意味ではこれまたどうでも良い感じで勉強になります。多くの文献を参考にしたと想像されますし、このジャンルは作者の得意分野なので所謂色物とは一線を画す作品だと思います。
また、それぞれのイラストがあまりにリアルで本格的で、特にツチノコなどは実物を見て描いたのかと目を疑う様な出色な出来でした。

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