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ミステリの祭典

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プラハの墓地

作家 ウンベルト・エーコ
出版日2016年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2023/04/10 18:30登録)
集大成ともいえるこの小説には、十九世紀に流行した新聞連載小説への著者の愛が充ちている。十九世紀のパリを取り巻く出来事や人物がふんだんに詰め込まれ、いわば史実の網の目をつくっていて、その結び目に密かに一人だけ虚構の主人公を編み込む。主人公はパリのモベール小路で骨董屋を構えながら、警察や教会の秘密の結社から依頼され、偽の遺言書や手紙や書類を本物と区別できないほど巧妙に作る男である。その秘密の仕事が、やがては偽物そのものの作成にまで男を関わらせる羽目になるのだが、その長いプロセスこそがこの物語の読みどころだ。そこに殺人事件が絡み、ドレフェス事件をはじめ、ユダヤ人問題やイエズス会、フリーメーソンといった事柄が織り込まれる。歴史を紐解く面白さも物語を読むワクワク感も、存分に楽しめる著者ならではの小説である。

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