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ミステリの祭典

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生者のポエトリー

作家 岩井圭也
出版日2022年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2023/04/06 22:49登録)
“詩”は人をつよくする――。
トラウマを抱え言葉をうまく発することができない青年・悠平が、急きょ舞台で詩を披露することになり……。(「テレパスくそくらえ」)
最愛の妻を亡くした元気象庁技官・公伸は、喪失の日々のなかで一編の詩に出会う。(「幻の月」)
学習支援教室の指導員・聡美と、ブラジル出身の少女・ジュリアの心を繋いだのは、初めて日本語で挑戦した詩だった。(「あしたになったら」)
……ほか、人生の大切な一歩を踏み出す、その一瞬を鮮やかに描いた全6編。逆境のなかで紡がれた詩が明日を切り拓く、心震わす連作短編集。
Amazon内容紹介より。

老若男女が詩によって何かを掴んだり、救われたりする連作短編集。作風に比してその文章は意外にも淡々としています。その分読み易くはあったのですが、作者の力量からすればもっと情感豊かに描くことも出来たのではないかと思います。それだけが残念でした。

物語としてはどれもさして抑揚がある訳ではないのに、時として急に心揺さぶるシーンが出現したりして、なかなか評価が難しい作品だと言えるでしょう。しかし主人公の心情がよく描かれており、その意味では秀作なのかも知れません。私は詩に関してあまり理解が及ばない事もあり、いまいちピンと来ませんでしたが、上記にある『あしたになったら』の作中の詩にはああ・・・と思わず目が霞む感覚を覚えました。それはジュリアの境遇に同情してしまう己の未だ消えぬ感受性に戸惑う瞬間でもありました。

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