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ミステリの祭典

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睦月童

作家 西條奈加
出版日2015年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2023/04/04 08:45登録)
日本橋で下酒問屋を営む平右衛門は、東北の村から少女イオを招く。平右衛門が従業員にイオを紹介すると、手代の一人が震え出し、店の金に手を付けたと告白した。実は睦月神の加護を受けたイオには、人の罪を映す特殊な能力があったのだ。物語は、イオと平右衛門の息子の央介が、体を売る女が働く川岸に狐火が出る、旗本屋敷で何人もの人間が姿を消す、などに挑むミステリとして進む。
事件の背景は、人間ならだれもが抱えているかもしれない心の闇が置かれているので、読み進めるのがつらくなるかもしれない。また謎が解かれるにつれ、贖罪とは何か、事件で心に傷を負った人たちをいやすには何が必要かという現代とも共通する重いテーマが浮かび上がってくる。ただ、温かい人情が加害者と被害者を救済する鍵になる可能性があるとの問い掛けもなされているので、決して暗いだけではない。
イオと央介が知った睦月神の秘密は、現代まで続く社会の「闇」の象徴となっていた。そのため驚愕のラストを読むと、どのように「闇」と向き合うべきかを否応なく考えることになるだろう。

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