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ミステリの祭典

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ミッドウエイ水爆実験
ニューヨークCIA調査員 リチャード(リック)・サヴィル

作家 ミシェル・ルブラン
出版日1973年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/03/27 05:45登録)
(ネタバレなし)
 1956年1月。米国政府はこの春に、ミッドウエイで水爆実験を計画していた。放射能の影響を鑑みた人体実験も必要とされ、ジャクソン刑務所の死刑囚3人に、実験後は医療班が研究かつ治療にあたる、そして生きのびたら自由に釈放するとの条件で、被検体にならないかとの打診が行われた。計画が進む一方、ミッドウエイの実験場前線の周辺には、東側のスパイが潜入しているらしいと観測され、ニューヨークCIAの調査員リチャード(リック)・サヴィルは潜入捜査にあたるが。

 1956年のフランス作品。作者ミシェル・ルブランのシリーズキャラクター、リチャード・サヴィルものの一本。例によってルブランなので短めの長編で、日本では同じくサヴィルもののもう一方の長編(やはりやや短め)『自殺志願者』との合本で、『ミッドウエイ水爆実験』の表題のもとに創元文庫から刊行された。
 本レビューでは、ほかのルブラン作品の書評の例に倣って、その短めの長編一本ずつ、登録することにする。その辺は請う、ご了承。

 ミッドウエイでの水爆実験の際、人体実験が実行されると西側の科学、医学技術が向上する可能性もあるので、東側のスパイは、水爆実験前に前線の研究所内部に干渉したり、さらには被検体の死刑囚を殺そうとしたりする。そんな敵の作戦を防ぐのが、主人公サヴィルの使命で今回のストーリーのメインプロット。

 東側の作戦そのものが納得できるようなそうでないような、軍事作戦的に微妙な感があるが、それをとりあえず了解して読み進むと、存外にシンプルな筋立て。
 一部サブキャラクターはしっかり文芸設定らしきものを作りこんだはずなのに、あまり話に活かされないとか、その辺のバランスの悪さもいささか気になる。

 まあそうはいっても最後まで、それなりに楽しませて読ませてしまうのは送り手の話術がウマイからではあろう。佳作の中か下くらい。
 場面場面では、そこそこ印象に残りそうな見せ場も用意されてはいる。

 いつものトゥッサン警部ものとかのサスペンス編やクライムストーリーなどは趣の違うエスピオナージだが、緊張感の高め方などに、どっか共通するものがあるのは、それなりに理解できる。

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