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ミステリの祭典

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殺人は殺人

作家 ドミニック・ファーブル
出版日1976年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2023/03/19 17:13登録)
~身障者だった妻が死んだ。事故だった。だが、ポール・カストネールには後ろめたさがあった。日に日に気難しくなり、ポールを責め立て苦しめていたマリーの死をまったく望んでいなかったと言えば嘘になるからだ。
そして、ポールをさらに不安にさせるような出来事が。マリーの埋葬現場に見知らぬ老人がふらりと舞い込んできた。老人はポールの耳元でこう囁いたのだ。
「厄介払いでしたな!」

1972年フランス。デビュー作『美しい野獣』でフランス推理小説大賞を受けたドミニック・ファーブルの三作目のミステリ。おそらくこれが最後の小説(二作目は未訳)であろうと思われる。フンコロガシの研究で忙しかったのだろうか。筆力はあるし独自性もあるのに。惜しい。
本作『殺人は殺人(ころしはころし)』は『美しい野獣』と比較すればミステリに寄った作品に仕上がっている。本作でも作者の個性は健在であった。
『首を切られても走り回る鶏』なる表現が本作でも登場する。首を切られた鶏になにか強い思い入れでもあるのだろうか。

前半は秘かに死を願っていた妻が本当に死んでしまって、大きな解放感を味わい、ささやかな罪悪感を抱えていたポールの心理がじっくりと描かれる。
心理描写中心で話がなかなか動いていかないが、やがて妻の死が本当に事故だったのか疑念を抱き、それは大きな不安となってポールを押しつぶさんとする。情景描写やボタンなどの小道具もうまく絡めて効果を上げている。あとがきによれば作者はジョルジュ・シムノンが好きらしいが、なるほど筆力のある作家だと思う。
ここまではミステリというよりは心理小説に寄っている。
後半は展開が早まり、次々と状況が変化していく。細々と積み上げ追い込みつつ、よいアイデアもあったりして面白かった。よい意味でわけがわからなくなっていくのがいい。
警視、義姉、老人、愛人らのキャラも悪くない。フランスミステリらしさというか、いまひとつ腑に落ちない点もなくはないが、彼らの思惑がなかなか読み切れないところがいい。
最後にポールが~を決意するところなど意表を衝かれて笑いそうになってしまったくらいだ。なんで~なのにこんな状況にまで陥るのだ?
最後まで読者の緊張(というか、「結局これどうなるんだ?」という気持)を持続させ得るサスペンスの良作だと思う。採点はややおまけして7点。

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