(2023/04/15 00:53登録)
(ネタバレなしです) レジナルド・ヒル(1936-2012)が生前に発表した短編集はわずか3作で、その第3短編集に当たるのが1994年出版の本書です。ダルジールシリーズの中短編を4作収めていてシリーズファン読者が喜びそうな内容ですが、その内「パスコーの幽霊」と「ダルジールの幽霊」は第1短編集の「パスコーの幽霊」(1979年)と重複しており、あちらを既読の読者にとっては2作しか新作が読めないということになって無条件に喜べないでしょう。ダルジールとパスコーの出会いを描いた「最後の徴収兵」は意外にも誘拐サスペンス。といっても2人のちぐはぐな行動のおかげでサスペンスとしてはゆるゆるですけど。ハヤカワ文庫版で200ページ近い「パスコーの幽霊」は1年前の失踪事件を扱い、幕切れはなかなか劇的ですが謎解きとして曖昧な部分が多く残ってしまってすっきりできません。1番短い「ダルジールの幽霊」は今の事件と昔の事件を詰め込んでますが、もう少しページを増やして丁寧に説明してもよかったかも。異色のSFミステリー(といっても作中時代の2010年ももはや過去になりました)の「小さな一歩」が案外とまとまった本格派推理小説でした(下品な締めくくりもこの作者らしい)。
|