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ミステリの祭典

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ベビー・ドール
私立探偵リック・ホルマン

作家 カーター・ブラウン
出版日1971年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/03/15 11:11登録)
(ネタバレなし)
 「おれ」こと、ハリウッドのトラブル・コンサルタント、リック・ホルマンは、映画プロデューサーのアイヴァン・マッシ―から依頼を受ける。仕事の内容は、マッシーお抱えの美人女優トニー・アスターが、人気歌手のラリー・ゴールドと噂があるので事実関係を調査し、場合によっては今後の交際を止めてほしいというものだ。だが双方の人気芸能人には、ハリウッド業界人たちの思惑が絡み合う。そして以前、新婚直後の夫に失踪された経歴のあるトニーには、まだ秘めた人間関係や前身があった? そんななか、ひとりの人物が命を落とすが。

 1964年のクレジット作品で、ミステリ書誌サイト「aga-search」によればホルマンものの長編、第7弾。

 人気スターのスキャンダル騒ぎのコントロールという、ハリウッドものとしてはいかにもありそうな事件を主題にしており、いささか地味な印象。
 人死にも、終盤でちょっと荒れ事が起きるまで、殺人かどうか不明の(読者視点では、たぶんソウナンダロウ)転落死が一件だけと、かなり地味(あ、トニーの夫の失踪事件があるか。でもそっちは……)。

 とはいえ、そのメインヒロインのトニーの従姉妹で、ブロンドの美女リザのキャラクターがなかなか魅力的。
 リザの実母ネイオミは元・大成しなかったコーラスガールで、星一徹風に娘のリザに芸能界での成功の夢を託したものの、リザが音痴と判明したために失望。かわって姪のトニーをステージママならぬステージおばさんとして養育し、人気スターとなる一助に貢献した過去がある。
 で、割を食った形のリザが心に抱えるルサンチマンが、陽性かつエネルギッシュなメインゲストヒロイン像に転化されており、そんな彼女とホルマンとの関係も、一種のラブコメ風に妙にゆかしい。

 今回はこの辺で得点ポイントかと思ったら、殺人事件の真相もちょっとヒネりがきいていてオモシロかった。殺人実行のビジュアルイメージは、少しだけ不気味でこわい……かもしれない。

 事件解決後の、良い意味でウヒャッハーなクロージングも愉快で、ホルマンと仲間たち、楽しそうだな、オイ。
 佳作。

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