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ミステリの祭典

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最後の鑑定人

作家 岩井圭也
出版日2022年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2023/02/22 21:53登録)
(ネタバレなし)
 警察の沿革組織である科学捜査研究所を訳あって7年前に退職した「科捜研のエース」土門誠は、今は民間の科学鑑定所を開設。たった一人の文系の女性をスタッフに、それでも警視庁などから重要事件の証拠や関連情報の解析を頼まれる「最後の鑑定人」として職務をこなしていた。そしてそんなある日--。

 初読みの作者だが、伊岡瞬のホメl言葉ほか評判が良いようなので手にしてみる。
 内容はいわゆる専門技術職のお仕事プロワークもので、全4編の連作中編を収録。最後のエピソードが主人公、土門の辞職の事情にからむ、とりあえず連作のまとめ譚でそういう意味では広義の長編ともいえる作り。
 ミステリというよりは、善と悪の狭間に立った人間ひとりひとりがどう処すべきか、そして目前の相手がそうだと知ったときにどうすべきかの主題を語った小説として読みごたえがあった。
(ただ第四話の事件の形成の事情など、妙なリアリティがあってちょっと面白い。そんなに大したネタでもないが。)

 科学的客観性において首根っこを掴まれ、次第にグウの音も出なくなる犯罪者という図は結構サディスティックな感じもあるが、そんな冷徹な作劇の構造に惹かれる面もある。
 そうほいほい出さなくてもいいから、また本シリーズの続刊をいつか読みたいともおもう。

 評点は6点だけど、悪い数字じゃない。

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