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ミステリの祭典

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平成古書奇談

作家 横田順彌
出版日2022年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2023/02/20 20:07登録)
(ネタバレなし)

「僕」こと、小説家志望で、現在はフリーライターの25歳、馬場浩一は、創作の資料を求めて、学芸大学駅の周辺にある古書店「野沢書店」を訪れる。脱サラして古書店を営む主人、野沢氏の蘊蓄はいつも興味深いが、もう一つ、浩一が同店に通う理由は次女で女子大生のガールフレンド、令子に会うためだ。そんな彼らの周囲で、またも古書に関する奇妙な事件が。

 小学館の季刊小説誌「文芸ポスト」に2000年から02年にかけて連載された、9本の連作短編を初めて書籍化。
 「文芸ポスト」の編集部には機動力がなかったのか、あるいは当時の小学館の書籍企画営業の動きが緩慢だったのか、同誌には山田正紀の長編ミステリほか、まだ雑誌掲載のまま単行本化されてない作品がいくつか眠っているらしい。

 いつぞや読んだ、同じ作者の『古書狩り』同様の古書収集の世界を主題にした短編集だが、向こうがノンシリーズ編の集成だったのに対し、こちらはレギュラー登場人物が固定されている完全な連作もの。ただし、内容の自由度は向こうに負けず劣らずで、SF、ホラー、幻想譚、非スーパーナチュラルな古書界の秘話もの……と幅広いストーリーを見せる。
 巻末の解説で日下センセイがおっしゃるほど「傑作」だとはとうてい思えないし、もしヨコジュンのネームバリュー無しに、無名の新人作家がこれを書いていたら、たぶん活字にすらしてもらえなかったんじゃないの? と思いたくなるような出来なのもある。
 それでもサクサク読めるのは、まあよろしい。その程度にはソコソコ楽しめる、一冊ということで。

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