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ミステリの祭典

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闇に堕ちる君をすくう僕の嘘

作家 斎藤千輪
出版日2022年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2023/02/12 05:29登録)
(ネタバレなし)
 東北出身の20歳の若者・鏡大輝は、世田谷のダリア専門店にバイトとして就職。その配達先の周辺で大輝は、謎めいた17歳の美少女、天原巫香に出会う。彼女は元、人気の子役俳優だったが、現在は周囲からなぜか「魔女」と呼ばれて、不登校の日々を送っていた。大輝と巫香の関係は、新たな展開を迎える。

 2016年から活躍されていて、すでに著作も何冊かある(ミステリに限らないらしい)作者さんらしいが、本作は、まったくの一見で読んだ。2年前に同系列の青春ミステリ、同じ双葉文庫で「双葉文庫ルーキー賞」の大賞の2回目を受賞しており、それに続く作品(シリーズものではない)のようである。

 じわじわと薄皮を少しずつ剥いでいくように、人間関係の綾を見せていく形質の作品。相当の筆力を感じさせる文章の効果もあって、3時間ほどで一気読みさせられた。
 登場人物は多くない(モブキャラを数えても15人前後)が、ストーリー上の配置はかなり巧妙で、話作りのうまさを実感する(ひとりふたり、行動が極端なキャラクターがいるが、本作の場合、それが良い方の印象に転化するので、文句には当たらない)。

 終盤、真実が判明してからの感慨は相応の手ごたえで、読後感は、まあ、とにかく、読んで良かった一冊、という感想が真っ先に来る。
 広義のミステリで青春ミステリなのは確実だが、それと同時に、謎解きミステリの尺度でどーのこーの言わなくてもいいようなタイプの作品。
(悪口などではまったくなく、一時期の、文芸味の強いギャルゲーの、メインストリームのシナリオ、みたいな印象もある。)

 この作家には、今後もちょっと注目してみたい。
 評点は8点に近い、この点数というところで。

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