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ミステリの祭典

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村山槐多 耽美怪奇全集
伝奇ノ匣4 東雅夫編 乱歩「槐多「二少年図」」、津原泰水「音の連続と無窮変奏(槐多カプリチオ)」併録

作家 村山槐多
出版日2002年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2023/01/29 22:15登録)
私は彼の作品を、谷崎潤一郎氏の「白昼鬼語」、佐藤春夫氏の「指紋」などと並べて、日本の最も優れた探偵小説の一つだとさえ考えている。

と乱歩に言わせたオトコがいる。それが、槐多。

ミステリファンの間では知っている人は少ないかも...でも無名な人じゃない。大正の「夭折の天才画家」。評者も「尿をする裸僧」を見てシビれた! 乱歩も槐多の「二少年図」を没後入手して、自分の書斎に飾っておくほど愛していた...

でこの槐多、大正4~5年にかけて、押川春浪がかかわった「武侠世界」や「冒険世界」に「悪魔の舌」「魔童子伝」「魔猿伝」「殺人行者」といった小説を寄せている。いやこれがね~伝奇色の強烈な怪作揃いで、とくに人肉嗜食を扱った「悪魔の舌」はアンソロ収録が結構多かったりもする。槐多自身は小遣い稼ぎみたいな感覚だったかもしれないが、この四編はどれも異色のエンタメとして強烈な印象を残す。で、これらの作品に作家になる前の乱歩が衝撃を受けていたというわけだ。

槐多は小説は余技、といえばそう。あと小説の未完作、詩やエッセイ風のものを選んで、津原泰水の槐多オマージュ作品「音の連続と無窮変奏(槐多カプリチオ)」を加えて、東雅夫が編んだのが学研M文庫のこの本。槐多自身はポオの影響が強いから、詩がとくに「悪魔主義」。「血染めのラッパ吹き鳴らせ/耽美の風は濃く薄く/われらが胸にせまるなり」でまあ、

吾人は殺人を尊重す。殺人は人に恐怖と重量とを与うるが故なり。アラン・ポーは殺人を描きてレファインされたり。

とエッセイ「人の世界」で書くくらいだから、ミステリ作家と呼ぶ資格は充分すぎるくらい。

乱歩に先立つ大正の初年にも「悪魔主義」の文脈でいろいろと「ミステリ」が取り上げられ実作もされている。谷崎潤一郎もそうだし、国枝史郎だってそうだ。槐多だって「ミステリ史」に位置付けられて当然な作家なのである。

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