(2023/01/28 17:38登録)
(ネタバレなしです) 2000年発表の密偵ファルコシリーズ第12作です。序盤はファルコの日常が描かれていて家族や友人とのやり取りが続きます。シリーズ作品が回を重ねるとこういう場面が増える場合がありますがそれまでのシリーズ作品をあまり読んでいない読者だと馴染みにくいし、ミステリー要素もほとんどないので辛く感じるかもしれません。8章の終わりでやっと事件が発生してからは読みやすくなります。本書は冒険スリラーでなく犯人当て謎解きの本格派推理小説で、ファルコは警備隊に雇われて捜査に参加するので私立探偵というより刑事に近いかも。もっとも作中時代が古代ローマですから現代の警察小説の捜査に比べれば人権無視な場面も多々ありますけど。被害者が出版社と銀行の経営者なので企業ミステリー要素があるのが本書の特徴です。24章でファルコが「たくさんの容疑者で騒然としている事件が好きだ」と語っていますが33章の中間報告では捜査が行き詰まっています。終盤に容疑者を一堂に集めてどんでん返しの推理説明があるのが本格派風ですけど、都合よい証言に助けられているところも多いのはちょっと残念ですね。
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