(2023/01/21 20:35登録)
(ネタバレなしです) シヴォーン・ダウド(1960-2007)は遺作となった「ロンドン・アイの謎」(2007年)の他にもう1冊のテッド・スパークシリーズを書く契約をしていて、それが本書です。もっとも(ロビン・スティーヴンスによる)「作者あとがき」を読むとダウド原案といってもタイトルが決まっていただけでダウドは執筆にほとんど着手していなかったように思えます。そうだとしてもガンで急逝したダウドを責めるつもりは毛頭ありませんけど。ロビン・スティーヴンスによって2017年に完成された本書はなかなかの力作で、「ロンドン・アイの謎」と比べると家族ドラマ要素は少し弱くなりましたがその代わりにニューヨークを舞台にして、テッドたちが異郷の地で奮闘(時に戸惑い)する描写が印象的なトラベルミステリー要素が作品個性となっています。本格派推理小説としての謎解きはとても充実しており、容疑者リストを作成しての活発な議論にテッドの緻密で丁寧な名推理と子供読者だけに読ませるのはもったいない出来栄えだと思います。難点を上げるとするなら現場見取り図は添付してほしかったのと、何でもあり的な真相が読者の好き嫌いが分かれそうなところです(これ以外の真相はあり得ないという説得力は高いのですけど)。
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