エキゾティック アル・ウィーラー警部 |
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作家 | カーター・ブラウン |
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出版日 | 不明 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2023/01/11 16:37登録) (ネタバレなし) その夜、「おれ」ことパイン・シティ保安官事務所勤務のアル・ウィーラー警部は、自宅のアパートに雑誌の定期購読セールスに来たブロンドの若い娘といちゃつきかけていた。そこに上司のレズニック保安官から電話があり、射殺された男の死体がタクシーで保安官宅に届けられたと告げる。ウィーラーはレズニックからこれはお前の悪質な悪戯か? と疑われかかるが、身に覚えのないことで、そのまま、その殺人事件を捜査することになった。被害者の素性は、3年前に10万ドルを横領した嫌疑で逮捕、投獄され、いまは仮釈放になったばかりの中年男ダン・ランバート。奪われたままの10万ドルの行方は今も不明だが、ランバートは最後まで無実で冤罪だと主張していた。ウィーラーは捜査を開始するが、彼の前にはまたも美女と死体が続々と現れる。 1961年のクレジット作品。アル・ウィーラー警部の第20長編。 小林信彦の「地獄の読書録」やAmazonのレビューなどでは、割と好評のウィーラーものの一編。 被害者ランバートの娘コリーヌがすでに成人した美女で、女性用衣料品店を経営。おなじみのヒロイン、保安官秘書のアナベル・ジャクスンが「ブーティック」というのよ、と教えてくれる。邦訳が出た1967年当時としては、まだブティックというカタカナ言葉は確かに新鮮だったのだろう。翻訳は田中小実昌。 被害者ランバートは逮捕前は投資相談所を経営しており、そのパートナーだった男が、今はパーティ用のジョーク・グッズを輸入販売しているハミルトン・ハミルトンなる男。ネーミングは「87分署」のマイヤー・マイヤーのパロディか? ハミルトンの妻ゲイルの実家が資産家で、夫の元・共同経営者ランバートが横領したとされる金は彼女が立て替えて、横領の被害者に返したことになっている。 ハミルトンの冗談グッズというか大型アイテムで、スカートの女性がその上に乗ると強風が吹き出てパンティが丸見えになる装置が登場。リック・ホルマンものの『宇宙から来た女』でもあったネタだ。 あと、ウィーラーが出向いた私立探偵の事務所で、IBMの電子計算機が登場。ミステリの作中で、民間にこの装置が置かれていた描写としてはかなり早いのでは? と思う。 ミステリとしては、細かい伏線を回収。動機の方もちょっとクリスティーの諸作を思わせる印象で(こう書いてもネタバレにはならないと思うが)、なかなか面白い。 この作者の著作のなかでも丁寧で手堅い分、いつものはっちゃけた味とは微妙に違う感触もあるが、まあそれはそれで。 そーいえば、ウィーラーが悪漢に殴られて失神する場面があり、基本は一匹狼の遊軍捜査官としてハードボイルド私立探偵っぽい挙動の彼ながら、こういう描写は意外に珍しいハズ。 なおタイトル「エキゾティック(異国の情緒・味わいを持つさま。異国風)」は原題そのままだが、メインゲストヒロインのひとりコリーヌの洋品店の屋外の、店名を標記した文字の書体がそれっぽいということから。決して、出て来るお女性の容姿がどーのこーのの、タイトリングではない。 |