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ミステリの祭典

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出署せず

作家 安東能明
出版日2014年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2023/01/09 18:29登録)
警官の不正行為「折れた刃」、ひき逃げ事件の真相「逃亡者」、保護司が犯した殺人の深淵「息子殺し」、証拠の保管問題を巡る「夜の王」、五年前の女性店員失踪事件の再捜査「出署せず」の五編が収録されている。表題作は、二百ページを超える長さで、別の事件を重ね予想外の展開をたどる。物語の興趣が深いのは、刑事たちの使命と矜持と職務が絡まり、複雑な倫理があらわになるからだ。柴崎は警視庁で出世の階段をのぼっていたが、部下の拳銃自殺の責任を取る形で綾瀬署に左遷された。しかも今度は、年下の三十六歳の女性官僚・坂元真紀が署長に着任し、情け容赦のない決定を下す。反発を覚える現場の刑事たち。両者の要請に応え、刑務課課長代理の柴崎は悩みながら捜査をする。地味だが力強く読ませる。大きなどんでん返しはないが、小さな意外性と捻りがある。男の困難な職務が充分に描かれ、感情移入を優しくしてくれる。

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