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ミステリの祭典

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小説作法の殺人

作家 免条剛
出版日2022年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/12/20 08:47登録)
(ネタバレなし)
 若い、日伊のハーフ女性、麻川真理ノーマこと「マリ」は、私立探偵・常念勝の事務所を訪れた。マリの話によると、彼女のルームメイトの美女、藤堂理沙がある日、ベッド上で枕に顔を押し付けて窒息死。理沙のパトロンだった富豪の依頼人が、警察には事故死と判断された彼女の死に不審を持ってるので、マリを通じて調査を依頼にきたらしい。常念はマリを説き伏せて本当の依頼人である富豪に対面、いくつかの情報を得て調査の条件を決めた上で仕事に乗り出す。その手掛かりの一つは、小説のセミナーに通っていた理沙が執筆した、未完成の? ミステリ作品だった。

 作者は「小説新潮」の元編集長、半自伝風のエッセイなどの著書はあるが、小説の創作は本書が初めてだという。興味が生じたので、読んでみる。
 
 友人の死に自分自身もおぼろげに疑惑を感じるヒロインが、ちょっとだけ(本当に少しだけ)変人っぽい青年探偵の捜査に、半ば強引に同道。二人が脚で多くの関係者の間を嗅ぎまわっていくうちに、何やらトリッキィな事件の輪郭が次第に見えてくる……。

 こう書くと、いかにも謎解き要素をそれなりに盛り込んだ、昭和のB級ハードボイルド私立探偵小説っぽい。
 そういう意味ではけっこう好みで、それなりに面白かったが、情報を求めて歩き回るシークエンスがいささか冗長……というよりは、出会う関係者の頭数が多すぎて軽く疲れる、とはいえこの手順が、たぶん作者の構想的には外せないものだった? のも何となく察せられるので、そんなに悪い点はやれない。
 クライマックスで明らかになる、作中作そのものの意外な真実も、さらにそれと現実の物語の絡ませ方も悪くない。
 で、まあ、あの、ラストだが(略)。

 丁寧すぎて生硬な印象はあるが、さっき書いたように、昭和の私立探偵小&B級スリラーの枠内に、それなりの謎解きミステリを組み込んだ作品として見るなら、十分に佳作の領域。
 作者は現在72歳と、小説家デビューとしてはご高齢ではあるが、前歴での素養も含めて一定のものにはなっているとは思う。
 ただし若いヒロインに、どことなく妙なロマンチックな筆致を見やるのは、作者がオッサンなのか、それとも読むこちらがオサーンなのか?(笑・汗)

  評点は7点に近いこの点数で。

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