home

ミステリの祭典

login

名無しの探偵

作家 ビル・プロンジーニ
出版日1989年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/12/03 09:02登録)
(ネタバレなし)
「私」ことサン・フランシスコの私立探偵(オプ)は友人で元刑事のエバハートを仕事上の相棒に迎え、彼とともに複数の依頼を受けていた。そんなある日、設計技師の青年マイケル・キスカドンが、つい最近、実父の35年前の自殺を知った。その事実について調査を願いたいと申し出る。あまりに歳月が経っているため躊躇しかけたオプだが、キスカドンは当の父が著名なパルプマガジン作家のハーモン・クレインだったと説明。オプが探偵業界の中でも有名なパルプマガジンの収集家だと最初から知って、難しい案件を依頼にきたのだった。そんな依頼人の思惑にまんまと乗せられ、調査を開始するオプ。が、やがて白骨死体が予期せず発見される形で、過去の殺人事件が浮上してくる。

 1985年のアメリカ作品。他作家との合作編(向こうのレギュラー探偵との共演編)2本を含めて、オプシリーズ12番目の長編。

 巻頭でリスペクトの言葉とともにマクベインに献辞が捧げられているが、本作も本筋の事件を追うオプのメインストーリーと並行して、周辺キャラたちとの日常描写がふんだんに盛り込まれる。
 その意味でまさに87分署ものを連想させなくもない。

 ヤワい作りの多いプロンジーニのオプものにしては比較的、しっかりした方の謎解きミステリで、過去の作家クレインの死については閉ざされた室内での本当に自殺? まさか密室殺人? という方向に興味が誘導される。
 以前にも密室・不可能犯罪ネタを扱ったことのある本シリーズだが、今回の方が解決は、いくぶんマシになったような(それでも半ばチョンボな密室トリックではあるが)。
 
 というわけでストーリーそのものはそれなりに出来がいいし、作者が書き込んだメインキャラクターたちは相応の存在感だが、一方で送り手の興味のない登場人物は本当に影が薄い感じ。お話も作りは悪くないくせに、全編の緊張感が乏しいので、正直やや、かったるい。

 それでもちょっと余韻のある? クロージングを含めて、トータルとしてはまあまあの仕上がり。評価は佳作でいいんじゃないの。

【余談その1】
 中盤で、少し前から自分の事務所にエバハートという相棒を迎えたオプが、自分たちを同じサンフランシスコで1929年に活躍していたスペード&マイルズ・アーチャーと比較するのには笑った。いや、気分はわからないでもない。

【余談その2】
 オプと恋人ケリーが自宅で『ゴジラ対モスラ』なる映画のテレビ放映を観る場面があるが、正確にはそんな日本語表記される作品はない。1985年でまだゴジラVSシリーズも始まっていない時期の作品だから、これはフツーに『モスラ対ゴジラ』の方だな。

1レコード表示中です 書評