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ミステリの祭典

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遅番記者

作家 ジェイムズ・ジラード
出版日1994年10月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 びーじぇー
(2022/12/02 23:25登録)
ウィチタ警察署のルーミス警部は、腐臭を漂わせ、もはや原形を失っている死体とその傍らに置かれていた五本の花を前にして茫然と立ちすくんでいた。それはまさしく六年前の連続殺人事件の再現に他ならなかったからだ。一方、新聞記者のサム・ホーンは、愛妻クレアと娘を交通事故で失った後、自ら望んで遅番記者になっていた。
妻と別れた苦い経験のあるルーミス、上司の愛人関係を続けている女性記者バビッキ、息子との幸せな生活を望みながらも復讐の衝動に駆られるサム。連続殺人事件にかかわることになったこの三人の心理の移ろいが交互に、そして綿密に描き出されているのが印象的である。
三人はそれぞれまだ見ぬ犯人のイメージを追うことによって、事件の影響を受けるのだが、心理描写を重視するあまりその肝心の事件が空洞化してしまっている印象は否めない。
最も作者の意図はそこにあり、事件を解決することにないのであろうが、やはり釈然しないものに感じたり、いささか感傷的すぎる心理描写のくどさにうんざりしてしまう。

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