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ミステリの祭典

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一杯の珈琲から

作家 エーリヒ・ケストナー
出版日1993年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 クリスティ再読
(2022/11/29 10:58登録)
ケストナーのユーモア三部作も最後。ちょっとした策略めいたものはあるけども、上機嫌なファンタジータッチの恋愛劇。ミステリ味はほぼなし。ザルツブルク音楽祭を背景として、古き良きウィーン趣味な優雅さがある。

ザルツブルクと言うと評者の世代はカラヤンだけど、そのずっと前。パウムガルトナーが音楽祭を仕切っている頃。ロッテ・レーマンが「薔薇の騎士」に出てる(オクタヴィアン?)。
主人公のゲオルグは親の遺産で裕福に暮らす青年。ザルツブルク音楽祭に友人が招待されたので、それを頼ってザルツブルクへ。しかし為替管理の問題があって、ゲオルグは金持ちなのにザルツブルクでは一文無しの境遇。カフェで偶然知り合った「女中」と名乗る女性コンスタンツェとゲオルグは恋に落ちた....

いやいやヒロインの名前からしてモーツァルト夫人。詳しくは述べないがモーツァルト「レクイエム」の成立事情(田舎貴族がモーツァルトに代作発注)を下敷きにしたような、伯爵一家総出のプラクティカル・ジョークみたいな「お芝居」にゲオルグは巻き込まれつつも、恋愛成就!

あっさり軽めのお話。吹き出すようなところは随所にあるが、小洒落たヒロインの言動によるところも多いなあ。「雪の中の三人男」みたいにプロットが辛辣ではない分、サクッとした味わいに留まる。

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