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ミステリの祭典

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作家 真梨幸子
出版日2022年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/11/27 08:28登録)
(ネタバレなし)
 ユーチューバーとしての利殖に頓挫した40歳の喪女で処女の鹿島穂花は、相続した新宿区内の古い古い家をシェアハウスに改造して家賃を得ようとする。環境を整える一方、大手不動産会社「ガラスの靴」の斡旋で6人の同世代の女性入居者が集まってくる。……が。

 久々に真梨作品を読んだ。
 帯には「これぞイヤミス!」と惹句があり、今回もおなじみの? という作風を期待させた。
 が、実際の前半の感触は、人間悲喜劇みたいな味わいでちょっとニュアンスが異なる印象。とはいえ中盤~後半からは(以下略)。
 
 ミステリ的には大仕掛けのミスリードが露骨で、本サイトに集うような読み手ならまず最低限のラインは見破れると思う。
 ただしそのあとのくだんの案件の処理は、よくもわるくも「実は~だったのだ」的な、情報を後出しする作劇が基本となる。

 悪く言えば、作者が物語を組み立ててまとめる作業を勝手に進め、読者はそのあとをへいへいと言いながらついていくだけという思いだ。まあそれでもそれなりにパワフルに、いささかトンデモかつ悪趣味なドタバタ劇? をぐいぐい読ませてしまうあたりは、やはりベテランのお仕事であろう(と聞いた風なことを言うほど、評者はまだ実はこの作者の著作はそんなに読んでないのだが)。

 なんのかんの言っても、戦後昭和史を何十年単位で振り返る作業もふくめて、やがて凸凹したひとつの物語像が浮かび上がってくるあたりの感覚は、なかなか面白くはある。
 評点は7点に近いこの点数ということで。

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