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ミステリの祭典

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丑の刻子、参ります。

作家 黒史郎
出版日2013年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2022/11/21 22:16登録)
誰かを呪ってほしければ、摩栖太羅神社の裏の神木に、黒い憎悪の念と、依頼書を収めた藁人形を打ち付けておけばいい。その願いを叶えるために、ひと打ちひと打ち呪いを込めて打ってやろう―私は“呪い姫”丑之刻子。とある会社のOLとして働く馬野時子。「幽霊」と揶揄される佇まいと愛想のなさで、社内でも浮きまくりだがそれは表の姿。彼女の本来の仕事は依頼された恨み事をはらすということなのだ。そんな刻子のもとに、とある頼みごとが持ち込まれるが―。
『BOOK』データベースより。

昼はちょっと変わったOL、しかし退社後は一転呪術により依頼人の恨みを晴らす、裏稼業を持った丑の刻子こと馬野時子。ホラーはホラーでも呪われる側ではなく呪う側が主役という異色作です。しかしながら、怖さという点ではそれ程でもなく、それどころかラブコメの要素まで含まれています。
愛だの恋だのに無関心で経験のない時子は、社内でも女子に人気の賀茂橋(カモノハシ)に猛烈なアプローチを掛けられながら、無表情でやり過ごしてしまいますが、その関係が微妙に発展してく様はまるで恋愛小説のようでもあります。

無機質で誰に対しても愛想のない、しかしある意味無敵な時子に最大のピンチが訪れ、其処をどう切り抜けるのかが最大の見せ場。勿論それだけではなく、様々な依頼にどのような呪術を仕掛けるのかも興味深いですね。
作者の黒史郎ってあまり知らていませんが、私は個人的に割と好きな人で、ホラーだけではなくミステリも書けるのに、余りこちらに寄って来てくれないのがつれないなと思ったりしています。本作も安定の面白さで、怖いの苦手という人でも意外とイケるのではないでしょうか。

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