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ミステリの祭典

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自殺倶楽部

作家 谷村志穂
出版日1994年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2022/11/20 22:30登録)
「私」は高校二年生。ある放課後、図書館で「海の泡同盟」と称する詩を読む会に誘われたが、その集まりは、実は自殺を目的とする集団だった。そこで「私」に課せられた役割は死を見守ること、他人の死を記録することだった―。「ヒカルモノ」である死と、その対照にある「ヨドムモノ」としての生。真っ直ぐに生きようとすればするほど、死に近づき魅了される十代の純粋な魂の軌跡を描く問題作。
『BOOK』データベースより。

自殺願望を持つ高校生男女五人で構成された「海の泡同盟」。目的は勿論集団自殺の決行です。果たしてそれが本当に実行されるのかどうか、文章からは余りに詩的な為その動向がはっきり掴めません。又、メンバーの個性もいまひとつ目立ったものが無く、動機も深掘りされません。ですから、Amazonのレビューにあるような衝撃とは程遠い内容となっています。三十年前なら問題作だったかも知れませんが、今となっては色褪せて見えてしまうのはやむを得ない所でしょう。

ミステリではないので謎等は存在せず、いささか読み進める推進力に欠ける気がします。唯一作中で何度も繰り返される、青木の言う「ヨドム」と云う言葉の意味が終盤まで隠蔽されており、謎と言えば謎ですが。
作者の意図は計り兼ねますが、自殺は良くない事だとの世間一般の常識はこの作品には通用しないと思います。むしろ強い意志を持った若者たちにとって、死が美化されている様にすら感じます。それが自殺にせよ「ヒカルモノ」であれば救われもするでしょうが、現実的とは言い難くその辺りにもう少し焦点を当てて貰えたら、もう少し引き締まった小説になったのではないかと思います。

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