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ミステリの祭典

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トナカイはプロ雀士

作家 古田丈二
出版日2007年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2022/11/18 22:58登録)
サングラスをかけたトナカイが牌を倒してみせた。「ロン、マンガンだ。これで終わりだな」伝説の雀士“赤鼻のトナカイ”が三星会というヤクザと繰り広げる麻雀戦争。狭い雀荘の一角で、壮絶なバトルが始まった。赤鼻のトナカイは命を失うことなく明日を迎えることができるのか。勝負が終わった時、さびしげな背中を見せ、男は立ち去っていく…。ユーモアを交えつつ本物の強さを問う麻雀小説。
『BOOK』データベースより。

短い、短すぎる。短編一本でたったの71ページ。そして薄い。カバーを外したら本体の厚みが僅か2ミリ位しかありません。私はかつてこんなに薄っぺらい小説を見た事がありません。よくもまあこんなのを出版しようと思ったなあと感心します。因みに出版社は新風舎文庫だそう、知らんけど。本屋で立ち読みされたらそれで終わりじゃないですか。書店の本棚に収まっている光景も想像できませんが。

しかし、ですよ。これが面白い。最強の雀士トナカイとヤクザの山下との命を賭けた戦いが今始まる。牌図もないのにその情景がありありと浮かんできて、手に汗握る攻防が読み応え十分です。
雀荘に客は他におらず、名もないおやじとマスターがなし崩し的に面子に入りますが、この二人を含めた四人の個性もなかなか良く表現されており、麻雀という特殊なゲーム性を遺憾なく発揮させています。ただ、伝説の雀士と呼ばれる割りにトナカイが弱気で、終始山下に圧倒されヒヤヒヤさせます。勝敗は最後まで分かりません。その勝負の行方は・・・これは意外な拾い物でしたね。

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