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ミステリの祭典

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マフィアへの挑戦 3
マック・ボラン/別題『マフィアへの挑戦3 仮面の復讐者』

作家 ドン・ペンドルトン
出版日1973年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/11/15 06:52登録)
(ネタバレなし)
 両親と妹をマフィアによって死に追いやられたベトナムからの帰還兵マック・ボランは「死刑執行人」として、全米いや世界中に伏在する犯罪組織との果てしなき戦いを続けていた。ボランはマフィアの大物ボスのいるロスアンゼルスに、ベトナムでともに死線を潜り抜けた9人の戦友を集めて「抹殺部隊」を結成。同地の激戦でボランは大事な戦友たちの大半を失ったが、逃げおおせた敵の大ボスを追ってカリフォルニアに向かう。そんなボランは、別のかつての戦友で優れた外科医であるジム・ブランツェンの手を借りて、すでに広く敵の犯罪組織の知るところになった自分の顔を整形。ベトナムで5年前に戦死した美青年の戦友フランク・ランプレッタのものに変えるが。

 1970年のアメリカ作品。ウン十年を経て、大昔に呼んでいたシリーズ第二巻の続きを読了(笑)。
 前巻のクライマックス、ボランの作戦を成功させるためあえてみずから貧乏くじを引く抹殺部隊の仲間たちの泣ける図や、次々とボランの視界に入ってくる仲間たちの最期の描写とかは、今でも割としっかり覚えてるのだな、これが。

 というわけで予想外にすんなり、この物語世界に帰還できた。(ソロモンよ、私は帰ってきた、というところか。)
 でまあ、ボランがシリーズ3冊目にして整形して顔を変える趣向は、序盤のシリーズ2冊目で顔を変えてしまった悪党パーカーの前例にならう感じ(向こうは1963年の作品でソレをやってる)なのだが、さすがにそれだけじゃ後進の作品は心もとないと考えたのかなんだか、別の見せ場や趣向もそれなりに用意している。
 第1作では家族の直接の復讐の対象にもけっこう冷静に引き金を弾いていたボランが、本作では側杖を喰って殺された者が出てしまった事態に心を乱され、初めて激情に駆られて敵を殺すとか、過去のベトナム戦争で善行を積んでいた事実(体を張って、戦火に巻き込まれかけたベトナム人の子供を救ったり)が語られるとか、のちのちの「フェニックス」路線に連なる、政府側のひそかな支援者の登場(になるのか?)とか。
 あと、せっかく顔を変えたということで、敵組織の懐に潜り込んでかき回すあたりは、良い意味でお約束の展開、というところ。

 憎いマフィアの連中でも、直接の銃の標的として抹殺していくばかりではなく、ときには同士討ちに誘導したり、あるいは今後の破滅の未来へと導いたり、割といろいろな料理法を(あれこれと、そのときそのときのボラン自身の内面を覗かせながら)見せていくあたりは職人作家という感じで飽きさせない。
 なかには敵の陣営ではあるが殺すまでもないキャラクターも登場してくるが、最終的にどういう扱いで終えるんだろと思っていると、意外にソノ辺は作者もちゃんと準備していたり、王道の大衆小説的な仕上げはさすが。いや、ホメてるぞ、念のため。

 思っていたよりも、結構オモシロかった。
 正直なことを言えばいささか雑なところもあるが(ボランは作戦遂行上、ひとつ大きなスキを見せているが、劇中でその件に関する反省などもないし)、まあ半世紀前のペーパーバック・ヒーローという前提から始めれば、なかなか悪くない出来である。
 評点は7点にはいかないが、この点くらいは確保ということで6点。

 さて次はそのまま『マフィアへの挑戦4』……と思いきや、そーではない! 創元文庫版の3と4の間に、のちの長期計画も考えず一冊だけお試しでポケミスで先に翻訳されてしまっていたマイアミ編『マイアミの虐殺』が入るので、ちゃんと順番通り読むのなら、まずはそっちからなのである。
 実は本作のラストの方で、予告編的にこのマイアミでの大敵の存在が匂わされているんだよな。このあともずっと、この手の読者向けの次巻へのフックが用意されているのであろうか。

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