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ミステリの祭典

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ピラミッドからのぞく目
イルミナティⅠ

作家 ロバート・シェイ&ロバート・A・ウィルソン
出版日2007年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2022/11/13 13:32登録)
評者にしては珍しく、昔読みかけて挫折した本。70年代の伝説の奇書として悪名高いからには、ぜひとも再チャレンジ!
要するに「酔う本」。「車酔い」とか「二日酔い」とかの部類で、昔挫折したんだよね。「今誰が何している」がポンポン跳びまくるので、読書の平衡感覚みたいなものが狂ってくるわけだ。それでもこの本はOK。「読むドラッグ」といえばそんなサイケデリックでアナーキーな本だから、流れに逆らわずに身を任せれば、それなりに楽しめる。「酔う」のはセンスを平衡に保とうとするからなんだね。

この作者たちはまるっきりの能なしよ―文体も、構成もなってないわ。出だしは推理小説風なのに、SFなったかと思うと、怪奇ものになるし、気味悪いほど退屈な何十というテーマをめぐるめちゃくちゃに細かい情報がぎっしり詰まっているの。

と作中で「書評」というかたちでメタにこの本の評が入っているような本!

左翼系雑誌社が爆弾テロによって破壊された。刑事が見つけたのは、ケネディ暗殺の裏やアフリカの小国でのクーデター、ラスベガスで開発される細菌兵器などなどで暗躍する秘密結社イルミナティに関する膨大なメモだった。黄金の潜水艦の艦長でアナーキストのハグバードは、このイルミナティと戦い続けていた。雑誌社の編集長と記者、刑事たち、性的ヨガのインストラクターなどが、学生運動の挫折を引きずりながら、セックスとドラッグにまみれつつアナーキズムの旗の下に結集しつつある...

う~ん、話を要約すればそうなんだけども、まとめとしてはイマイチ伝わらないな。日本じゃアナーキズムとかリバタリアンって受け入れられ難いこともあって、原著は1970年代のベストセラーなのにようやく邦訳は2007年。海外のカルチャーには絶大な影響を及ぼした本なのに、日本じゃ時期を失したこともあって、全然話題にならない。この本の大テーマは「陰謀論」なんだけども、その「陰謀論」で隠された秘密がたとえば「陰謀論は全部ウソ!」とか、悪質なメタ(自己参照)なジョークに近いものだったりする。陰謀論で一山当てたい「ダ・ヴィンチ・コード」なんかとは対極みたいなものだよ。

宇宙はぼくたちを騙しているのさ。いい加減なことを吹きこんでね。

世界が正気と呼んでいたものが現在の惑星の危機を招いたんだ。だから正気でないことだけが実行可能な代案なんだよ。

モンティ・パイソンをさらにサイケにしたような小説? まあまださらに「黄金の林檎」「リヴァイアサン襲来」に続くから、どうなることやら....

(不和の女神エリスを崇拝する「自己破壊的ダダ禅」ディスコルディア派みたいなハッカー流パロディ宗教のネタやら、The KLF の Justified Ancients of Mu-Mu の元ネタやら、評者は結構懐かしい...)

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