home

ミステリの祭典

login
凱羅
漫画

作家 板橋しゅうほう
出版日1986年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2022/11/09 15:17登録)
「ブレードランナー」やら「AKIRA」で80年代にサイバーパンクが流行したわけなのだが、日本では漫画が中心だった印象もある。評者ここらへんに引っ掛かりがあるので、懐かしい、というのもあって取り上げよう。
まず本作。いや双葉社「月刊スーパーアクション」読んでたよ。「西遊妖猿伝」「2001夜物語」「護法童子」やらやら、ニューウェーブSF漫画誌だもの。「スーパーアクション」の末期で一番注目していたのが本作。だけども単行本2巻出して「スーパーアクション」が休刊すると、間を開けてアスキーの「ログアウト」に移籍して連載・完結。前半はサイバーパンクの色彩が強いけど、後半はファンタジックなマーベルコミック、と登場人物や絵柄はあまり変わらなくても作品の力点が変わっちゃったので、前半7点、後半5点。なのでこの評も前半を主眼に取り上げる。
舞台は「文化首都京都」。主人公の善鏡は坊主頭の元「機動僧兵」。善鏡は「つつあるき」というデジタルデータをそのまま聴覚を通じてリアルに体験する能力を持っていた。丸木沢製薬が秘密のうちに研究する「凱羅因子」に関わる秘密を善鏡は秘めていたのだが、丸木沢が「凱羅虫」のかたちで管理していた「凱羅因子」の暴走(凱羅虫に刺された男性は怪物化)により、京都に地獄絵図が...
という導入。サイバースペース要素は「つつあるき」で、ICE(侵入者対抗電子機器)に引っかかって善鏡が失明するシーンなど完備。ジャパネスクは言うまでもなし。パンク要素も善鏡の仲間になる「凱羅六花撰」のうち十左や敵役のマッドサイエンティスト、カーマインのキャラづけに影響がある。いやマジメにサイバーパンクしているし、善鏡が丸木沢の研究所に潜入して秘密を探るあたりのアクションホラーもよくできている。恐怖を克服して怪物化を「飼い慣らして」しまうカーマインのキャラクターも秀逸。

板橋しゅうほうというと、アメコミの影響が強い漫画家なんだが、70年代後半〜80年代初期というと、たとえば大友克洋へのメビウスの影響やら、風忍のドリュイエ、あるいはアニメなら「ファンタスティック・プラネット」の日本公開といったかたちで、手塚風でも劇画風でもない「ニューウェーブ」の波に乗った作家になる。後半なんて本当にマーベルだしね。サイバーパンクとしては尻切れトンボなのが残念。

「スーパーアクション」の連載で「どうなったのか?」が評者ずっと気になっていた。だから本サイトでサイバーパンクやろうか、で後半も改めて読んで、取り上げることができてうれしい。この作品、ジョジョの第三部とか影響していると思うんだが...

1レコード表示中です 書評