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ミステリの祭典

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連鎖犯

作家 生馬直樹
出版日2022年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2022/11/08 06:11登録)
(ネタバレなし)
 新潟県の一角で、32歳の美人シングルマザー、戸川尚子のふたりの子供、中一の娘・凛(りん)と、小六の翔が誘拐された。謎の誘拐犯人の要求する500万円の身代金を払う当てもなく尚子が困惑していると、やがて誘拐されたふたりは無事に解放された。だが事件の周辺は、さらに意外な方向へと展開してゆく。

 初めて読む作者だが、平明かつどこかリズミカルな文章は非常にリーダビリティが高い。
 捜査陣、被害者家族、謎の誘拐犯、そして……とそれぞれにキャラクターも立っている。語りたいテーマについてはこの場ではあえて伏せておくが、21世紀の我が国では非常に切実なもので、その主題への踏み込みの深度はともかく(ことさら悪いとも浅いとも思わないが)、少なくともメッセージ性を作品の軸にすることには成功している。

 終盤の強烈な意外性はかなりのもので、捜査のなかで伏在していた謎がほぐされてゆく辺りは、ヒラリー・ウォーの諸作とかに近いものを感じた(評者の主観だぞ)。
 ただし真犯人の思惑は傍から見ると相応にリスキーなものでもあり、万が一の場合を想定してないのではないか? という気にもなった。まあここではあまり詳しく書けないが。

 言い換えるなら、なかなか面白いミステリ的な着想で捻り具合だが、いささかの強引さを見過ごせないというところ。それでも登場人物たちはそれぞれ、まともな人間はもとより、悪役や場合によってはイヤな奴にまで、妙なキャラクター的な魅力があり、この作者はそういう部分がうまいのだと思える(味のある脇役はそれなりに登場する)。

 重い昏いテーマを扱い、きびしい叙述も散見するが、それでも読後感がどこかさわやかなのもいい。
 一見で手に取ってみた作品だが、佳作~秀作。これからこの人の作品も、ちょっと注目していこう。

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