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ミステリの祭典

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古書狩り

作家 横田順彌
出版日1997年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2022/10/19 21:07登録)
(ネタバレなし)
 幅広い作風のSF作家にして、さらに旧作国産SF(的作品)紹介の名著『日本SFこてん古典』(評者はつまみ食いでしか読んでないが)の執筆刊行や、明治からの野球史の研究などでも知られ、それらの活動にあわせて古書の世界にも造詣の深かった作者による、古書の収集をテーマにした連作短編集。1990~93年の「月刊小説」に掲載された全10本の短編が収められている。

 たぶん家人(今は他界した)が買ったハードカバーの元版、その最初の2~3本だけを以前に読んで、あとは長年放り出していたが、ちょっと前から本の所在に気づいて、日々の行動の隙間を埋める時間(獣医の待合室での待ち時間とか、旧型のセカンドPCの立ち上げ時間とか)に少しずつ読み始め(最初から読み直し)、二週間ほどで読了した。

 共通テーマの連作ものの短編集で、設定も登場人物も完全にバラバラ。日常の謎ミステリ風のものから、素朴なSF短編、ホラー編、古書がらみのちょっといい話風のものまで、相応にバラエティ感のある作品が並んでいる。
 SFやホラー系は、よくない意味で60~70年代でも読めたような、悪く言えばありきたりの作品が多いが、語り口の軽妙さと古書界のトリヴィアへの興味で、まあ形にはなっている。ただし今の新人作家が、短編小説新人賞に応募してこんなのを書いたら、確実に一次審査で落ちるようなもの。
 結局、表題作の日常の謎ミステリ風の「古書狩り」(なぜその老人は、いやいやそうに、何年も同じ本を買い続けるのか?)の真相がいちばん、なるほどね、という説得力があって面白かった。昭和中盤までの出版文化にも目が向く、佳作の小編。

 作者にしても余戯(こんな言葉あるかな?)的に書いた連作ではあろうし、悪い意味ではなく、時間潰しとしては手ごろな一冊ではあった。

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