りんたとさじ 漫画 |
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作家 | オガツカヅオ |
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出版日 | 2009年10月 |
平均点 | 9.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 9点 | クリスティ再読 | |
(2022/10/02 11:14登録) 評者「ネムキ」ってもう20年近く愛読している...だから本作も連載で読んでいて、単行本にまとまったときに即購入。本が絶版品切れになったあたりで火がついて、今では「知る人ぞ知る」ホラーの名作に出世。 最近本作が、ミステリマガジン2017年7月号の「このミステリ・コミックが大好き」で紹介さていることに気がついて、じゃあ本サイトでも、いいんじゃない?と思って取り上げる。同年11月号にはこの作者の「ふくろねこ」が掲載されたりしたから、やはり中の人にも好きな人がいるんだな~ クールなメガネ男子「リン太」に恋した関西弁の少女佐藤順子(略して「サジ」)。しかしリン太は「ゲン担ぎオタク」と評される奇人で、「カゴメ」と呼ばれる謎の団体でアルバイトをしている。サジはリン太と付き合うようになり、「カゴメ」が扱う奇怪な事件に関わるようになり、リン太の影響で「見える」ようになる.... というのが枠組みで単行本で8作が収録。リン太にとっての「カゴメ」の先輩の三国さんは、子供の頃初恋の幼馴染が交通事故死したのを知らずに一緒に添い寝したことが縁で、今その初恋の幼馴染と同棲している。リン太とサジにカレーを振る舞う三国さんは、恋人が向こうの部屋の炬燵に隠れていて、二人を驚かそうとしているんだ...と耳打ちする(「炬燵の人」) サジ、まあ落ちつけや。あとで説明したるけど、害はないんや。だけど...後ろは見るな。そっちはちょっと、縁起が悪い。 怪異は日常のふとした瞬間にまぎれて起きてしまう。気がつかなければそれまで。それに気がついてしまえば....「誰にでも突然そうなる可能性があり、そのことは誰にも選べないし、避けられないのです」 それは善悪でもないし、因果応報でもない。ただ「落ち込むだけ」というのが、この作品で一番「恐ろしい」あたりなんだと感じる。本作では派手な警察沙汰は「傘の人」くらいで、あとは怪異なんだか怪異じゃないのかわからないような「日常の怪異」が主体。これみよがしに怪奇現象が起きる「ホラー」ではない、微妙な日常の断層みたいな怪異を描き、しかも意外なオチを付けて見せるあたりが作者の手腕。主人公のサジに●●●を食べさせてしまう「また会う人」なんて本当に容赦ない(苦笑) いやいや、電子書籍になってから人気が出ていろいろ知られるようになったのが「らしい」といえばらしい、というか、本作自身が「都市伝説」みたいな作品。都市伝説ついでに言えば、単行本の後にまだ連載が続いていて、4編ほど未収録がある。赤ちゃんをあやすために、投身自殺した男の霊が訪れる話(「鳥の人」)とか、未収録にも凄い話がまだ残っているのが本当にもったいない。リン太とサジが別途登場する次作の「ことなかれ」も、「リン太、投身自殺?」という絶妙の引きで単行本1巻目が終わっていたりする。2巻目のボリュームが足りなそうなので、「りんたとさじ」の未収録がカヴァーされるかな、と期待していたんだけども、どうも出そうな雰囲気がない。 いやいや、本当に、もったいない。ネムキは面白い作品が多いのに、朝日新聞出版は商売が下手過ぎる。 |