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ミステリの祭典

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死にざまを見ろ
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1961年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2022/10/02 00:17登録)
~プエルトリカンの青年ペペは老婆を殺害して逃亡している。ペペを追う警官たち、複雑な心情で事態の推移を見守るプエルトリカンたち、たまたまこの街にやって来た部外者たち。そして、パーカー刑事とヘルナンデス刑事はそれぞれの信念に従って事件に対峙していく。

1960年アメリカ。『サディーが死んだとき』と並ぶ87分署シリーズの裏名作。『電話魔』の次に発表された作品だが、当時の読者は少々面食らったのではなかろうか。エンタメとして抜群に面白いとはいえないが、個人的にはとても好きな作品。
プエルトリカンの少年たちはなぜ犯罪に走りがちなのだろうか。彼らの街を舞台にささやかな散文が連なり、いつしか一つの波となっていく群像劇。ドキュメンタリタッチの作品とされているが、それ以上に自分は本作を詩のように感じる。

裏表紙のあらすじと実際の内容は印象がだいぶ異なる。87分署の刑事たちが中心となって筋が展開していくわけではない。どちらかといえば街の不良少年たちが軸となっていて、事件は彼らを映す鏡のような役割である。87分署のメンバーでは二人の刑事が中心的役割を果たすのだが彼らにしても本作の中で起こるさまざまな出来事のうちの一つであるかのように扱われており、ことさら大袈裟な描き方はされていない。

作者がやや語り過ぎの部分もあるとはいえ、本作においてマクベインの筆は非常に冴えている。なんでもない男女の会話でさえもじっくりと滲み入ってくる。
よい小説の多くはさまざまな対比を作品内に織り込んでいるものだが、本作もそう。いくつかの対比の中で不良少年ジプとシクストの対比は本作の要となっている。さらにクーチの役割が非常に大きかったように思う。ストーリー展開において重要というよりは、作者の想いを少し捻った形で代弁する人物であったように感じる。
普通なら多く筆を割くであろうことがあまり書かれていない。書かずして書かれていることが多い作品だと思う。
それからパーカー刑事はもったいない。本シリーズでさほど出場機会に恵まれていないキャラ。彼のような性情麗しいとはいえない御仁の出場は作品にとって良いアクセントになったと思うのだが。

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