ジャッキー・コーガン |
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作家 | ジョージ・V・ヒギンズ |
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出版日 | 2013年03月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2022/09/24 16:45登録) (ネタバレなし) 犯罪者「スクワレル」ことジョニー(ジョン)・アマトは、知り合いの前科者の若者フランキーとその同輩のラッセルを仲間に、賭博場の経営者マーク・トラットマンの賭場からカネを奪う計画を進行する。トラットマンはかつて自分の賭博場で狂言強盗を働いた前歴があり、スクワレルは今回の犯行も、当人の狂言に見せかける考えだ。だがマフィア(らしいイタリア系の組織)の大物ディロンが自分の視界内の怪しい動きを察知し、彼は事態の収拾のために凄腕の部下ジャッキー・コーガンを差し向ける。 1974年のアメリカ作品。ブラッド・ピット主演の21世紀の新作映画公開に合わせて発掘翻訳された、原作の旧作のようである(評者は映画は未見)。 評者は作者G・V・ヒギンズの作品は、大昔に『エディ・コイルの友人たち』を、当時の新刊翻訳ミステリとして読んだ覚えがある。 ただし同作『エディ・コイル』の内容についての記憶はまったくない。一風変わったノワール系の作品だったという印象のみ、今ではうっすらと残っている。 それもそのはず、本作『コーガン』を読むと、たぶん『エディ・コイル』もそうだったのだろうと察せられるが、この作者の作品はプロットはシンプルな一方で、登場人物の会話は限りなく克明。かたや内面描写はほとんど? 無い。そんな独特のスタイルで小説が綴られる。こういうタイプの作品は記号的に情報を整理しにくく、おのずと記憶には残りにくくなるものだ。 本作ではヤマ場までは数名の登場人物の会話シーンがどんどん切り替えられていくが、その場その場の会話は本筋から離れようがどうしようが、作者の方で読者に向けて親切にダイアローグもしくは情報そのものを整理する気などまったくなく、とにかく劇中のキャラクターが思いついて口にした言葉はあまねく書き連ねる感じだ。 内面描写を抑止しながら貫徹されるこのスタイルは、ある意味ではノワール系ハードボイルドの神髄ともいえるかもしれない(きわめてドライな精神性も含めて)。 (ちなみにG・V・ヒギンズのこの作法にはあのレナードも強烈な影響を受けたらしく、自分の大好きな作品に『エディ・コイル』を挙げているそうな。さもありなん。) 劇中の犯罪者の多くが前科者で、逮捕と服役を神経質なまでに気にする(当然だが)一方で、警察そのものはまったく物語にからんでこないのも独特の興趣。犯罪計画の性格上、あくまで暗黒街の内側で生じて終わるノワール系ハードボイルドという閉じた世界の持ち味をよく感じさせている。 登場人物の誰にもスナオに感情移入する気の起きない一方で、事態の行く末は気になる、非常にクセの強い作品。読了後にAmazonの評価を覗くと、星の数は見事にバラバラ。まあそうだろう、そうだろう。 で、今回の評点はこんな数字で。 これは、結局、この作品、こんな評点程度の出来? というよりは、スゴ目の作品に食いつききれない、評者の器量の方に問題があるのだよ。きっと(汗・笑)。 |