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ミステリの祭典

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傀儡のマトリョーシカ Her Nesting Dolls

作家 河東遊民
出版日2019年05月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2022/09/20 06:35登録)
(ネタバレなし)
「俺」こと阿喰有史(あじきありふみ)は、県内随一の進学校「苦楽園高校」の一年生。入学直後の五月、阿喰はある思惑のもとに、自分が入部した文芸部のさらに部員を集めていた。そんななか、彼は同学年で新入生代表だった秀才の美少女・雑賀更紗(さいがさらさ)に接触するが、そんな更紗はとある苦境に立っていた。やがて阿喰と文芸部の仲間たちは、さらに事態に深く関わっていくが。

 3年前に新刊が出た時点で(その強烈な表紙ビジュアルも含めて)結構、反響を呼んでいた青春学園ラノベミステリ。少し前にようやくブックオフの100円棚で状態の良い美本を見つけて購入した。
 
 とにもかくにも以前にネットで見かけた時点での評判がよく、さらに裏表紙(表4)のあらすじ+作品紹介文の最後に「事件の結末に驚愕する学園ライトミステりー!」とあるので、かなり期待値は高かったが……。
 ……う~ん、残念ながらミステリとしては完全にハズレ。

 いや、実のところ、中盤では、主人公周りの設定にちょっと変わった文芸がさりげなく? 書かれていたので、これはハハーン……たぶんそういう方向の仕掛けだな、しかしなかなか綱渡りになるだろうな? 最終的に作者はどう捌くのかな? とワクワクしながら読み進めたら……(以下略・ボーゼンとしながら脱力)。

 ……うぬぬぬ。実際にソレっぽい部分もそこかしこにあるので、たぶんまあ、作者は当初はそんなセンを狙いながら、結局、モノにならなくて(以下略)。
 ファミコン版『ドラクエⅡ』と『Ⅲ』を続けて満喫したあとの『ドラクエⅣ』のクライマックスみたいなガッカリ感だ(例えが古いが・汗)。

 評者の場合、ラノベミステリというのは、それなり以上にテクニカルな作品をその形質ゆえに楽しむか、あるいは当初からミステリとしては、たぶんほとんど期待できないと思いながらそれを承知で、良い意味でゆるい気持ちの付き合いで読んでそこそこの愛情を育むかのどっちかなので、こーゆー読む前は相応のレベルを期待して、結果、完全にうっちゃられるというパターンは、意外に少なかったりする。

 まあ冊数読んでいれば、こんなのにも出会うでしょ、ということで。

 ただまあ青春小説としては、それなりには惹かれたりする。特に雑賀のキャラクターと、そして(中略の)ラストシーンはなかなか良かった。だからキライな作品では決してないけどね。とにかくミステリとしてのガッカリ感が大きい。

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