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ミステリの祭典

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呪縛伝説殺人事件

作家 羽純未雪&二階堂黎人
出版日2022年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/10/03 17:09登録)
(ネタバレなし)
 1989年。「私」こと、31歳の未亡人で5歳の娘・茉奈を連れた清澄綾子は、栃木県の旧家の息子で27歳の関守和壱と婚約した。関守家は、もう一つの旧家・蓮巳家とともに、村の勢力を二分する由緒ある家柄である。村には戦国時代に「アヤ」という薄幸の女が人々を呪った伝説があり、その名を持つ者は忌み嫌われることから、綾子を嫁として迎えることに反対の声も出る。が、優しく誠実な和壱の尽力のおかげで綾子は彼の婚約者として、娘とともに関守家の一員となった。だがその夜、思いもかけない惨劇が発生する。

 二階堂黎人デビュー30周年記念の新作。
 共作者の羽純未雪(うずみみゆき)に関しては主だった作品として2005年の長編『碧き旋律の流れし夜に』がある寡作の作家としか評者は知らない。評者は同長編は数年前に「SRマンスリー」の記事で紹介されてすぐそのあと古書を購入したが、まだ未読のまま。今回の新作(本書『呪縛~』)を読む前にそっちから読もうと思ったが、現物がまた見つからない。しかたなくこっちの新刊から読むことにした。
(別にシリーズものでもないし、世界観が繋がってる訳でもないようだが。)

 本文500ページ弱、本の重量600グラムという厚い重い一冊。一段組で文字の級数も大き目な本文はスラスラ読めるが、このボリュームのためにひたすら疲れる。
 
 お話は、旧弊かつややこしい嫁ぎ先と因襲の残る地方に来て戸惑いながらも奮闘し、一方で劇的な事件に巻き込まれる綾子の視点で大半が語られる。まるで昭和の連続サスペンスミステリドラマ「火曜日の女」シリーズの一本を毎週観ているような味わいである。そういう意味ではまあ楽しかった。

 劇中のトリックやギミックはいくつかあるが、一部の殺人トリックは「宝石」の「新人作家25人衆」に参加する一発屋作家が思いついた、トンデモトリックという感じ。そういった意味では微笑ましい。
 個人的には、別のトリックで、ビジュアル的に某・戦後の国内名作長編を思わせるアイデアの方が楽しかった。
 しかしマトモなパズラーとしては、真相が明かされる直前で、いきなり出てくるかなり大きめな作中の情報とか、いろいろとアレな作品ではある。

 ちなみに村に伝わる「アヤの呪い」の一環で、土地の水源「アヤの泉」が凶事の前に赤くなるという伝説が語られ、この件に最後で決着がつくが、これは手塚治虫ファンの二階堂センセ、昭和30年代初めの、手塚のあの中編作品(少女漫画)へのリスペクトですな?
 謎解きミステリの部分とは特に関係ないお話上の趣向で、両方読んでれば、たぶん気づくだろう、とは思う。
 
 良い意味で、昭和のB級パズラーを現代にリビルドした印象。マトモな新本格だのガチガチの直球パズラーと思って読むとギャフン(死語)だが、ある種の趣向もののミステリだと思って読むなら、そんなに腹も立たない。
 いい気分で力がぬけながら読み終えられるクロージングも、これはこれで味。

【追記】
 この作品、テレビCMとかやらないのだろうか。マリリン・モンローそっくりのエロい女優が出てきて、それっぽい田舎のお屋敷の前に立って「じゅばくよん」とか甘い声で言うの。……いや、元ネタが分からなければいいです(汗・笑)。

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