home

ミステリの祭典

login
8月の母

作家 早見和真
出版日2022年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2022/08/29 22:23登録)
 愛媛県伊予市。越智エリカは海に面したこの街から「いつか必ず出ていきたい」と願っていた。しかしスナックを経営する母・美智子がいつも目の前に立ち塞がった。いつしかエリカも最愛の娘を授かり母となるが、「母性」の連鎖は悲劇を生んでいった──。実際にあった事件をモデルに描かれた、母子の強烈な愛憎の物語。

 著者自身「イノセント・デイズ」を超える一作と述べる渾身の一作。「男に翻弄される母親の母子家庭」とは昨今よく見る題材だが、伊予市を鬱屈とした閉鎖的な空間として描き、狭い世界でもがく少女の様を巧み描いており、リーダビリティは抜群。
 後半に行くにつれ、やや乱暴な展開に感じるところはあったが、歪んだ「母性」をテーマに人の小ささや力強さを描いた物語には力があった。

1レコード表示中です 書評