home

ミステリの祭典

login
ごくらくちんみ

作家 杉浦日向子
出版日2004年09月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 斎藤警部
(2022/08/17 23:56登録)
六十八種もの「珍味」紹介を、それぞれに合う酒を交え、掌編、というより指先くらいのサイズ(だいたい二頁)の小説群にまとめた珍しい本。イラスト解説付き。

なぜそんな本をミステリのサイトで紹介するのかと言うと。。ここで紹介すること自体がネタバレにはなりますが・・・各小説にちょっとした、もう霞のようにささやかな「アレ」を忍び込ませる酒肴、いや趣向が散りばめられているのですね。そいつが堪らなく、ミステリ心を刺激しに来やがるってなわけでありまして。 最初読んだ時は、なにしろこの「飲食本」にそんな要素を全く求めても予期してもいなかったものですから、それなりに大きな驚きに襲われてしまったものであります。

まあ「アレ」の趣向は主に最初の方の小説に寄っているようで、だんだん「アレ」とは無縁の「普通にしみじみする話」が増えて行くのですが「アレ無し」でもじゅうぶんの読み応えです。もちろん、珍味や酒の紹介としても、人生の話としても。 いかにも珍味らしい「旨さ」の言葉による表現はまこと達人の域で、そこにその、若くして病に斃れた著者晩年(逝かれる六年ほど前から)の雑誌連載らしい、死と生を愛おしげに見つめる感覚が絶妙に絡み合い、小さな生活絶景スナップショットをいっぱいまき散らして著者はこの世を去って行ったんだな、なんて風に思わせてくれます。

さて、あなたのお好きな「珍味」や「酒」や「人生のシーン」はこの本に如何ほど登場いたしますでしょうか。

青ムロくさや/たたみいわし/とうふよう/さなぎ/またたび/がん漬け/ふきみそ/ふぐこぬかづけ/うばい/からすみ/かぶらずし/このこ/ふなずし/とうふみそづけ/ほやしょうゆづけ/きんちゃくなす/しおなっとう/鮭の酒びたし/しおうに/ふくしらこ/あんきも/にがうるか/キャビア/そばみそ/モッツァレラ/じゅんさい/うみたけ/オリーブの実/みみがー/つくだに/ばくらい/ほねとかわ/くろまめ/さくらくんせい/うずらのぴーたん/かつおへそ/わさび/いぬごろし/瓶詰チェリー/虫の味/くじらベーコン/ぎんなん/パルミジャーノ・レッジャーノ/ちょろぎ/ゆべし/べにしょうが/きんつば/さしみこんにゃく/リエット/きもやき/ドライトマト/ラルド/みんでんなす/黒いブーダン/いぶりがっこ/にこごり/板わさ/はたはたずし/きんざんじみそ/ひょうたん/もうかの星/かつおのこ/貧乏人のキャビア/ジコイカ/エスカルゴ/ひずなます/はまなっとう/たてがみさしみ  付録「ごくらくちんみ」お取り寄せガイド

1レコード表示中です 書評