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ミステリの祭典

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イノセンス

作家 小林由香
出版日2020年10月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2022/07/28 22:10登録)
 音海星吾は中学生時代、不良に絡まれた彼を助けようとした青年を見捨てて逃げてしまった。青年はその後死亡、以来星吾はネット上で誹謗中傷を浴び続け、いつしか人と関わりを避けて生きるようになってしまった。
 大学生になっても人と関わらず生きる星吾だったが、そんな星吾を狙うように花瓶が落とされたり、車道に突き飛ばされたりと、不審な事件が続く。バイト仲間の吉田光輝、サークルの顧問・宇佐美ら、数少ない星吾を思う周囲の人達は星吾を心配し、事の真相を探ろうとするが――

 中学生なりの葛藤中で犯してしまった過ちに、ずっと縛られ続ける主人公の姿には考えさせられるものがある。そうした社会的ドラマを幹にしつつ、「誰が何を企んでいるのか?」という謎も持続され、ミステリ的にも魅力ある展開。
 デジタルタトゥで刻印を押された若き男子の苦悩と、疑心暗鬼になる彼の視点から描かれるフーダニット。何よりも結末がよく、読後感も非常に良い一作だった。

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