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ミステリの祭典

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素肌(すはだ)
アル・ウィーラー警部

作家 カーター・ブラウン
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/07/26 16:14登録)
(ネタバレなし)
 おなじみカリフォルニア州の一角パイン・シティ。「おれ」ことアル・ウィーラー警部は、上司のレイヴァーズ保安官に呼び出され、2億5千万ドルの財産を誇る富豪で、ニューヨーク在住の美貌の未亡人リン・サマーズと対面する。サマーズ未亡人の願いは、愛娘でまだ17歳のアナベルがナイトクラブの歌手リッキー・ジョーンズと駆け落ちして、このシティにいる、男が財産目当てなのは明白なので、あちこちのホテルやモーテルで娘と同衾しているリッキーを未成年を抱いた強姦罪で立件し、逮捕してほしいというものだ。未亡人はリッキーと娘の所在などを探るために私立探偵アルバート・H・マーヴィンを雇っていたが、実はウィーラーはついいましがた、何者かに殺されたその探偵の死体に会ってきたばかりだった。

 1960年のクレジット作品。
 アル・ウィーラーものの第14番目あたりの長編。
 
 全体的に良くも悪くも、フツーの一匹狼捜査官ハードボイルド風警察小説、という感じ。
 何十年か前に絶対に読んでるはずのウィーラーものの一冊だが、たぶんこれは、とにかく際立って特化したところがないので、かなり早めに内容を忘れただろう。
 なお評者は今回(まちがいなく大昔の前回も)、1967年刊行の第3版のポケミスで読了。単純に考えれば4回以上重版されているわけで、本作はウィーラーの事件簿の中でも、かなり売れた方だろうな。
 
 田中小実昌の脂ののった時期の翻訳も踏まえて、本文は最高に快調。
 レギュラーキャラの検視官ドクター・マーフィが探偵マーヴィンの死体を検死した際、汚れた手を洗う図を見たウィーラーが「やっぱり、(死体を扱う検視官としての)プロの洗い方はちがう」と感心する? 地の文なんか、ごくさりげないものながら爆笑させられた。
 
 事件の謎解きとしては、当時としてはもしかしたらきわどい方向の主題を扱っていたかもしれないが、俯瞰的に欧米のミステリを見回してみればそんなでもなかったか。1960年なら、こーゆーのもあるかも?
 最後の最後で、意外な御褒美としてウィーラーの部屋にやってくる某サブヒロインの描写がちょっと印象深い。
 ウィーラーシリーズの中では、正に中の中というところ?

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