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ミステリの祭典

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明日まで待てない

作家 笹沢左保
出版日1965年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/07/22 05:27登録)
(ネタバレなし)
 昭和中期の風俗「日曜族(目黒族)」。それは日曜日に高級飲食店「レストラン・メグロ」に集い、成り行き任せのガールハントや男漁りを楽しむ、生活に余裕のある男女たちの通称だ。そんな日曜族の一人で、新妻との夫婦生活が不順な32歳の二本柳優介は、昨日出会ったばかりの美女・城戸由香子を仕事場のマンションに連れ込むが、そこに精神科医と称する松平浩という男が来訪。松平は彼の所属する精神病院「戸畑精神科」のかつての患者、しかし正体不明の人物が、二本柳の生命を狙っているらしいと警告した。突然の事態に驚く二本柳だが、しかし彼には思い当たる節があった。

 1965年に刊行された、比較的初期の笹沢長編の一本。徳間文庫版で読了。
 評者は寡聞にして「日曜族」のことは今回初めて知ったが、実際に現実の昭和四十年前後の東京などで流行した、男女の性風俗らしい(ちなみに年下の家人に聞いてみたら、意外にもその呼称ぐらいは見知っていた)。いや、勉強になった。

 異常者(?)「姿なき狂人(作中の通称)」に身をおびやかされる主人公という、いささか煽情的かつショッキングな序盤で開幕。さらに冒頭から登場するメインヒロイン格の由香子もまた訳ありの態を見せ、小気味よいテンポでドラマの裾野が広がっていく。
(それでも途中、主人公の調査活動の迂路で、いささか話がダレないでもないが・汗。)

 で、中盤でダイイングメッセージ? なども登場するが、これは(中略)も含めて大方の予想がつくもの。さらに最後の最後で明かされる人間関係のサプライズも、やはりまんま思ったとおりであった。

 ただし「姿なき狂人」の正体に関しては、その実相まで踏まえてかなりのインパクトがあった。歴代笹沢作品のなかでも、ある意味においてトップクラスの感慨を呼ぶ犯人像ではあろう。

 読みやすい、早めに通読できる作品をと思って、二時間半ほどでいっき読みした一冊。秀作まではいかないが、佳作ぐらいにはなっているであろう。評点は0.25点ほどオマケして。

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