home

ミステリの祭典

login
脱北航路

作家 月村了衛
出版日2022年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 7点 麝香福郎
(2023/08/07 20:41登録)
北朝鮮海軍の旧式攻撃潜水艦11号。その艦長である桂東月大佐は、国の威信をかけた大規模軍事演習当日、潜水艦による日本への亡命を決行する。しかもそこには乗組員だけでなく、四十五年もの長さに渡り自由を奪われてきた日本人拉致被害者、広野珠代の姿が。
祖国を裏切り日本を目指す潜水艦11号を全力で猛追する朝鮮人民軍。魚雷、ロケット弾、対潜爆雷が容赦なく浴びせられ、さらに桂東月と無二の親友である潜水艦9号艦長の羅済剛にも11号撃沈の非情な命令が下る。
危機また危機の連続に損傷していく潜水艦、乗組員たちの中に渦巻く様々な想い。そして命懸けの脱北行は荒れ狂う海で、四十五年前に広野珠代の拉致を見逃してしまったことを今なお悔やむ元警官と老漁師、就任したばかりの船長が指揮する海保第八管区巡視船いわみと交錯することになる。
この勇敢なる者たちを愚かだと思うか、懸命に手を伸ばし助けを求める者を目の前にして、見て見ぬふりをする賢い選択か。手に汗握る海戦と人間ドラマを凝縮し、胸を熱くさせる作品。

No.1 4点 文生
(2022/07/22 05:22登録)
祖国に裏切られた男たちの亡命劇を拉致問題と絡めて描いた作品であり、潜水艦での戦闘シーンは迫力満点で読み応えがあります。ただ、歴史上の偉人とかではなく、リアルタイムで実在している人物を(名前を変えているとはいえ)登場させるのは逆にリアリティが損なわれる気がしてあまり好みではありません。クライマックスが浪花節展開なのも好みに合わず。

2レコード表示中です 書評