home

ミステリの祭典

login
飛ぶ孔雀

作家 山尾悠子
出版日2020年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 まだ中学生(仮)
(2022/07/17 22:19登録)
「飛ぶ孔雀」と「不燃性について」の2部からなる。二つをつなぐ世界は前者の冒頭で示される。「シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった」。つまり作品の舞台は「火が燃え難くなった世界」だ。
少女のトエは外の物干し場で七輪の火をおこすようになる。近くに川が流れている。ある時物干し場へ川舟が近寄ってくる。「そこへ行ってもいいかな」と言ってやって来たその人が、トエの恋人になる。
前半のクライマックスは真夏の庭園で開かれる茶会だ。火を運ぶ女たち。派手に飛ぶ孔雀。具体的なのに幻想的である場面だが、何が起きているのか、はっきりつかむのは難しい。
後半は、大蛇がうごめく地下世界や山での出来事がつづられる。前半と重なる固有名詞も出てきて、最後まで読むと、前半とのつながりがぼんやり浮かび上がってくる。人間が動物になったり、するりと異界に入り込んだり。これほど奇異な時空間を言葉で構築する作家の力量に驚愕。

1レコード表示中です 書評