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ミステリの祭典

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身の上話

作家 佐藤正午
出版日2009年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 YMY
(2022/07/07 23:17登録)
夫と思しき人が語る、妻「ミチル」の来歴は、次第に不穏な様相を見始める。とはいえ、彼女は何の悪だくみも下心もなく、「なんとなく」行動している。恋人ではない既婚の営業マンと何となく東京に生き、なんとなく帰れなくなる。
ミチルには一時間でも二時間でもじっと動かず放心できる癖があると語り手は告げる。それ自体は、さほど変わったことには思えないのだが、彼女の空白が運命を思いもよらない方向へと転がしてしまう。
何か物事が起きた時、停止して空白に陥る。そこには罪も作為も悪意すらない。それなのに事態はどんどん悪い方向へ転がっていく。誰もがミチルになりうると思えるところが怖い。

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