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ミステリの祭典

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熔果
堀内・伊達シリーズ

作家 黒川博行
出版日2021年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 小原庄助
(2022/07/03 07:32登録)
警察を懲戒免職になった後、競売屋の調査員として働く伊達が、堀内に一緒に仕事をしようと持ち掛ける場面で始める。フットワークが軽くコミュニケーション能力も高い伊達と、過去に負った傷がもとでステッキがないと歩くこともままならず孤独な堀内。二人は占有屋を立ち退かせるため、ある落札物件に向かう。そして福岡で起こった金塊強奪事件とのかかわりを嗅ぎ取り、消えた五億円の金塊の行方を追う。
「熔果」の熔は、鉱石や金属が溶けることを意味する。「果」は因果の果。溶かして鋳直することが可能な金塊をめぐるクライム・サスペンスにぴったりの題名だ。金以外の何かが溶けていることも象徴しているだろう。
例えば、事件の背後にいる「半グレ」と呼ばれる犯罪集団。群れながらも無秩序に、手段を選ばず金を稼ぐ。半グレのリーダーを探して日本各地を走り回る堀内と伊達もまた、刑事の本質を持ったまま裏社会に溶け込んで、違うものに変化した男たちだ。堀内と伊達が悪党を狩る動機に、金欲しさだけでは説明できない情熱が感じられるからこそ、本書は魅力的なのである。

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